【事例付き】副業詐欺で泣き寝入りしないために|高額なツール契約と返金の判断材料
「副業の高額ツールを契約したのに稼げない…」そんな副業詐欺にお悩みの方へ。契約書にサインした後や時間が経った後でも返金を求められる可能性があります。手口の構造やクーリング・オフの条件を弁護士が解説。泣き寝入りする前にご一読ください。
「副業のために高額なツールやシステムを契約したが、収益がまったく出ない」「契約書にサインしているので、いまさら返金は求められないのではないか」。当事務所には、こうしたご相談が数多く寄せられています。
結論から申し上げると、契約書があること自体は、返金を求められない理由にはなりません。判断の中心になるのは、どのような説明を受けて契約に至ったのか、説明された内容と実際に提供されたものが一致しているのか、という点です。
この記事では、高額なツールやシステムを契約させる型の副業詐欺について、手口の構造、返金や契約解除を検討できる場合、相談先の選び方を整理します。あわせて、当事務所が実際にお受けしたご相談の例もご紹介します。
※本記事に掲載するご相談事例は、ご本人および相手方が特定されないよう、時期・金額を抽象化し、内容を再構成しています。
1. 副業詐欺とは|高額なツールやシステムを契約させる型
副業詐欺と一口にいっても、手口はいくつかの型に分かれます。近年、当事務所へのご相談で目立つのが、「これを使えば稼げる」として高額なツール、システム、サポート契約を結ばせる型です。
いわゆる情報商材の販売、FXや株式の自動売買ツール、AIを使った作業支援など、掲げられる商材はさまざまですが、組み立ては共通しています。
「初期費用を払えば稼げる」という説明の構造
- 無料または少額のサービスを入口にして、連絡先を取得する
- 電話やオンライン面談に誘導し、そこで初めて高額なプランを提示する
- 「初期費用は回収できる」として、具体的な収益の金額を示す
- 他の利用者の実績とされる画面や表を見せて、説明を裏づける
- 手元に資金がない場合は、借入を勧める
特徴的なのは、費用の話が出るのが電話や面談に進んだ後だという点です。それまでは「話を聞くだけ」と思わせる作りになっています。また、収益の見込みが具体的な金額で示されるため、「初期費用は先行投資だ」と受け止めやすくなります。
契約前に確認できること
すでに契約されている方にとっては後の話になりますが、判断の材料として整理しておきます。
下記のような点が重なる場合は、慎重にご検討ください。
- 事業者の商号・所在地・代表者名が、書面やサイト上で明示されているか
- その法人が実在するか(国税庁の法人番号公表サイトで登記の有無を確認できます)
- 「必ず」「間違いなく」といった断定的な説明がされていないか
- 収益が生まれる仕組みについて、確認できる根拠が示されているか
- 費用の総額と、追加費用が発生する可能性が書面で示されているか
- 支払いのために借入を勧められていないか
2. ご相談事例|収益が出ないまま数か月が過ぎた例
ここからは、当事務所が実際にお受けしたご相談を、手口の流れを理解していただくための例としてご紹介します。
ご相談者 20代・女性・アルバイト勤務
入口 検索とSNS広告から電話勧誘へ。FXの自動売買ツールのプランを契約
支払い 契約した日に、合計で約60万円を送金。ほかに未払い分が残る
原資 消費者金融からの借入
経過 収益の受け取りはなく、相手方とも連絡が取れないまま半年以上が経過
「話を聞くだけ」のつもりから契約まで
ご相談者は、アルバイトとして働きながら収入を増やす方法を探しておられました。「副業」「在宅」「短時間」といった言葉で検索したところ、「在宅で稼げる仕事がある」という表記が目に入り、そこをタップされています。
その先はSNSの広告で、案内に従ってメッセージアプリを追加すると、電話の予約を求められました。この時点で費用がかかるという認識はなく、話を聞くだけのつもりで予約をされています。
電話の際に、FXの自動売買ツールのプラン案内が送られてきました。「初期費用を払えば収益を上げていける」「初期費用の数倍が稼げる」という趣旨の説明を受けたとのことです。あわせて、ほかの参加者のものとされる取引口座の画面も提示されています。
こうして、90万円近い金額のプランをご契約になりました。契約書は後日、郵送で届いています。一方で、解約に関する書面は交付されていません。
支払いのための借入と、残された未払い分
契約にあたり、ご相談者は手元の資金では足りない状況にありました。そこで相手方から指示されたのが、消費者金融からの借入です。複数社から借り入れ、契約した日のうちに2回に分けて、合計で約60万円を送金されています。
プランの総額との差額にあたる30万円ほどが未払いのまま残りました。この点について相手方からは、「収益が上がった中から支払える」と説明を受けていたとのことです。
その後、収益の受け取りは一度もありませんでした。やがて担当者とも連絡が取れなくなりましたが、解約の手続きはされないまま、半年以上が経過してからのご相談です。
この間、借入の返済だけはご本人の収入から続いていました。
3. 「泣き寝入りするしかない」と感じる3つの理由
副業詐欺のご相談では、ご連絡をいただくまでに時間が空いている方が多くいらっしゃいます。その背景には、共通した思い込みがあります。
理由1:契約書にサインしたという事実
書面にサインをしている以上、自分の判断で契約したのだから仕方がない。そうお考えになる方は少なくありません。
しかし、判断されるのは書面の有無だけではありません。どのような説明を受けて契約に至ったのか、説明された収益の見込みと実際の内容が一致しているのか、断りにくい状況が作られていなかったのか。こうした勧誘の経緯そのものが問われます。
理由2:契約から時間が経っているという事実
契約から半年、一年と過ぎていると、いまさら動いても仕方がないとお考えになりがちです。
時間の経過は、たしかに結果に影響しうる要素です。ただし、時間が経っているというだけで、ご相談ができなくなるわけではありません。ご紹介した例も、半年以上が過ぎてからのご連絡でした。
理由3:相手と連絡が取れないという事実
担当者と連絡が取れなくなると、交渉のしようがないと感じられるのは自然なことです。
もっとも、連絡が取れないことと、とりうる手段がないことは同じではありません。お支払いの記録が残っていれば、そこから進められることがあります。
いずれの場合も、ご自身だけで結論を出される前に、一度ご状況をお聞かせいただければと思います。
4. 高額なツール契約でクーリング・オフを検討できる場合
副業に関する契約は、内容によって特定商取引法の対象となる場合があります。なかでも関係が深いのが、業務提供誘引販売取引という類型です。
これは、「仕事を提供するので収入が得られる」という説明で人を誘い、その仕事に必要だとして商品やサービスを購入させ、金銭的な負担を負わせる取引をいいます。内職商法やモニター商法が典型例として挙げられています。
法定書面を受け取った日から20日間
業務提供誘引販売取引に当たる場合、法律で定められた書面を受け取った日から20日以内であれば、書面または電磁的記録によって契約を解除できるとされています。いわゆるクーリング・オフです。
訪問販売などの8日間と比べて期間が長く設定されているのは、この類型では収益が実際に出るかどうかの判断に時間がかかるためだと説明されています。
期間を過ぎていても検討できること
20日を過ぎていても、それだけで手立てがなくなるわけではありません。
- 法定の書面が交付されていない場合や記載に不備がある場合は、期間が進行しないと考えられています
- 勧誘の際の説明に事実と異なる点があった場合は、別の枠組みでの主張を検討できます
- 契約した内容が実際には提供されていない場合は、その点からの検討もできます
ご紹介した例でも、契約書は届いていた一方で、解約に関する書面は交付されていませんでした。どの枠組みで検討できるかは、交付された書面の内容と勧誘の経緯によって変わります。
5. 借入をして支払った場合に起きること
副業の契約で高額な支払いを求められた際、手元に資金がないと伝えると、借入を勧められることがあります。消費者金融、カードローン、クレジットカードの分割払いなど、勧められる方法はさまざまです。
ここで押さえておいていただきたいのは、貸金業者やカード会社との契約は、副業の契約とは別の契約だという点です。
そのため、相手方への返金を求めていく手続きを進めても、借入の返済義務がそれによって自動的になくなるわけではありません。収益が出ないまま、返済だけが毎月続くという状態になります。
ご紹介した例でも、収益を一度も受け取れないまま、借入の返済がご本人の収入から続いていました。
借入をしてお支払いになった場合は、返金を求める話と、返済をどうするかという話をあわせて整理する必要があります。ご相談の際には、借入の状況もあわせてお聞かせください。
6. 副業詐欺の相談先|警察・消費生活センター・弁護士の使い分け
ご相談先はひとつではありません。それぞれ役割が違いますので、整理しておきます。
| 相談先 | 主な役割 | 留意点 |
| 警察 | 刑事事件としての捜査、口座の凍結に関する要請 | 支払ったお金を取り戻す手続きとは別のものです |
| 消費生活センター | 消費者トラブル全般の相談、助言やあっせん | 消費者ホットライン188から最寄りの窓口につながります |
| 弁護士 | 代理人として、相手方への返金の請求や交渉を行う。振込先の金融機関への連絡も代理で行えます | 費用が発生します。見込みを含めて事前にご説明します |
刑事の手続きと、支払ったお金を取り戻すための民事の手続きは別のものです。警察に相談したからといって、それだけでお金が戻るわけではありません。逆に、弁護士に依頼したからといって、相手方が刑事責任を問われるわけでもありません。
口座の凍結に向けた金融機関への連絡についても同じです。なお、金融機関への連絡は、弁護士が代理人として行うこともできます。警察に出向くことに抵抗がある、何から話せばよいか分からないという場合は、ご相談いただければ当事務所から金融機関へ連絡いたします。
ご相談の前に手元にあるとよいもの
すべてそろっていなくても構いません。分かる範囲でお持ちいただければ、そこから整理します。
- お支払いの記録(振込明細、カードの利用明細など)
- 契約書や申込書、プランの価格が分かる資料
- 相手方とのやり取り(メッセージ、メール、通話の履歴)
- 広告や申込ページの画面
- 借入をされた場合は、その契約書類
とくに、お支払いになった総額は、借入の金額ではなく実際の支払いの記録でご確認ください。両者が食い違っていることがあります。
また、相手方から新たに連絡があっても、追加のお支払いには応じないでください。「未払い分を払えば返金できる」「手続きに費用が必要」といった説明を受けた場合は、お支払いになる前にご相談ください。
よくある質問
Q. 契約書にサインしています。それでも返金を求められますか。
A. 契約書があるかどうかだけで判断されるものではありません。どのような説明を受けて契約に至ったのか、説明された内容と実際に提供されたものが一致しているかといった点が重要になります。
Q. 副業詐欺は泣き寝入りするしかないのでしょうか。
A. 結果をお約束することはできませんが、泣き寝入りするしかないと決まっているわけではありません。お支払いの記録が残っていれば、そこから検討を始められます。まずはお手元の資料の状況をお聞かせください。
Q. 契約から半年以上が経っています。今からでも相談できますか。
A. ご相談いただけます。ただし、時間の経過は結果に影響しうる要素です。資料がお手元に残っているうちに、早めにご相談いただくことをおすすめします。
Q. クーリング・オフの期間を過ぎています。もう無理でしょうか。
A. 法定の書面が交付されていない場合や記載に不備がある場合は、期間が進行しないと考えられています。また、勧誘の際の説明に事実と異なる点があった場合は、別の枠組みでの主張を検討できます。
Q. FXの自動売買ツールを契約しました。これも副業詐欺に当たりますか。
A. 商材が何であるかで決まるものではありません。「これを使えば稼げる」として高額な費用を支払わせ、説明された収益が生まれない構造であれば、自動売買ツールでも情報商材でも、検討の対象になります。
Q. FX詐欺の返金は、投資詐欺とは別の扱いになりますか。
A. 入口が「副業」であったか「投資」であったかによって、適用を検討する枠組みが変わることがあります。仕事や収入を得る手段として勧誘された場合は、特定商取引法の枠組みも含めて検討します。
Q. 消費者金融から借りて支払いました。返済は止まりますか。
A. 借入は副業の契約とは別の契約ですので、返金を求める手続きによって返済義務が自動的になくなるものではありません。返済のご負担が重い場合は、そのことも含めてご相談時にお聞かせください。
Q. 解約の手続きをしていません。自分で解約を申し入れたほうがよいですか。
A. ご自身で連絡を取られたことで、追加の支払いを求められる場合があります。解約の可否や進め方は契約の内容によって変わりますので、ご連絡になる前にご相談いただくほうが安全です。
Q. まだ払っていない分の請求が来ています。支払うべきでしょうか。
A. お支払いになる前にご相談ください。未払い分をどう扱うかは、契約の経緯や現在の状況によって判断が変わります。
Q. 相手と連絡が取れません。それでも相談できますか。
A. ご相談いただけます。連絡が取れない場合でも、お支払いの記録から進められることがあります。
Q. 相談したら、必ず依頼しなければいけませんか。
A. そのようなことはありません。ご状況を整理してご説明したうえで、ご依頼されるかどうかはご判断いただきます。
まとめ
高額なツールやシステムを契約して収益が出ないというご相談では、「契約書にサインしたのだから仕方がない」「時間が経ちすぎた」「相手と連絡が取れないのだから打つ手がない」と、ご自身で結論を出してしまわれる方が多くいらっしゃいます。
いずれも、そう決まっているわけではありません。契約書の有無ではなく勧誘の経緯が問われますし、取引の内容によっては特定商取引法にもとづく解除を検討できます。連絡が取れなくても、お支払いの記録から進められることがあります。
一方で、時間の経過は結果に影響しうる要素です。また、借入をしてお支払いになった場合は、返済が並行して続くという別の問題も生じます。
副業のために高額な費用を支払ったが収益が出ない、相手と連絡が取れない、未払い分の請求が来ている。そうしたご状況でしたら、ぜひ一度ご相談ください。
お手元の資料がそろっていなくても構いません。分かる範囲の情報から、当事務所でご状況を整理してご説明します。ご相談いただいたからといって、ご依頼をお願いすることはありません。
弁護士 田中保彦
- 田中保彦法律事務所 代表弁護士
- 第二東京弁護士会
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