通販で注文した商品が届かず、「欠品のため返金します」という連絡が来た。案内に従って手続きを進めたつもりだったが、実際には自分の口座からお金が出ていた。当事務所には、こうしたご相談が寄せられています。

この手口の危ういところは、お金を払っているという自覚が生まれない点にあります。受け取る側に立っているつもりで操作しているため、気づいたときには複数回の送金が終わっているという経過をたどります。

この記事では、返金詐欺の手口と、支払った自覚がない場合に被害額をどう確認するかを整理します。あわせて、当事務所が実際にお受けしたご相談の例もご紹介します。

※本記事に掲載するご相談事例は、ご本人および相手方が特定されないよう、時期・金額を抽象化し、内容を再構成しています。

1. 返金詐欺とは|「返金します」が送金の操作に変わる手口

返金詐欺は、事業者からの返金を装って、被害に遭われた方ご自身に送金の操作をさせる手口です。近年、公的機関からも繰り返し注意喚起が行われています。

ネットショッピングの欠品を装う型

国民生活センターは、ネットショッピングで「欠品のため決済サービスで返金します」として送金させる手口について、注意喚起を公表しています。そこで示されている流れは、下記のとおりです。

段階内容
1商品の購入通販サイトで商品を購入し、代金を支払う
2返金の連絡サイトから「欠品のため返金する」という連絡が届く
3別の窓口へ誘導「決済サービスで返金手続きをする」として、メッセージアプリへ誘導される
4通話と画面共有無料通話で連絡を受け、画面共有をしながら指示どおりに操作を進める
5送金の完了決済アプリの「送る」操作をした結果、相手方へ送金したことになる

国民生活センターは、「決済サービスで返金します」と言われたら詐欺を疑うこと、画面共有は口座や暗証番号などの情報を知られてしまう可能性があるため避けることを呼びかけています。

返金の操作が送金になる仕組み

決済アプリには、送金の機能があります。返金を受け取るための操作だと説明されたうえで、実際には送金の操作を案内される。これが仕組みの中心です。

あわせて、「入金の確認のため」としてATMからの振込を求められることもあります。受け取るための確認だと説明されるため、送金しているという認識が生まれません。

また、画面共有を求められる場合があります。操作を教えてもらうためだと説明されますが、実際には口座の残高や暗証番号を見られている可能性があります。

還付金詐欺との共通点と違い

「お金が戻る」という説明で操作をさせるという点では、還付金詐欺と共通する構造を持っています。

還付金詐欺返金詐欺
名目医療費や保険料、税金の還付通販で購入した商品の欠品にともなう返金
入口自治体や年金機構などを名乗る電話注文した通販サイトからの連絡
操作ATMでの操作を電話で指示される決済アプリの送金操作やATMからの振込を指示される
共通点「お金が戻る」という説明で、本人自身に送金の操作をさせる

違うのは入口の名目だけで、受け取るつもりが支払いになっているという点は同じです。身に覚えのある注文に関する連絡であっても、「返金」を理由に操作を求められた場合は同じ危うさがあるとお考えください。

2. ご相談事例|受け取るつもりの操作が送金に

ここからは、当事務所が実際にお受けしたご相談を、手口の流れを理解していただくための例としてご紹介します。

ご相談者 60代・男性

手口 通販サイトからの「在庫切れのため返金」という連絡をきっかけとする送金

被害額 250万円ほど。数日のうちに複数回、複数の口座へ送金

原資 借入はなく、すべてご本人の預金経過 最後の送金の翌日にご相談。ご相談前に警察へ相談し、口座凍結も実施

注文後に届いた「在庫切れのため返金」という連絡

ご相談者は、インターネット通販で商品を注文されました。その後、当該サイトから次のような趣旨のメールが届いています。

「ご注文の商品は現在在庫切れのため、返金についてご連絡ください」

注文した商品が用意できなかったので返金する。それ自体は、通販では起こりうる連絡です。ご相談者は案内に従い、返金を受け取るための手続きとして操作を進められました。

気づいたときには完了していた送金

ところが、その操作は返金を受け取るためのものではありませんでした。指示に従って進めるうちに、決済アプリの送金に関わる操作が行われ、口座からお金が引き出されていきます。あわせて、入金のためとしてATMからの振込も行われていました。

ご本人が気づかれた時点で、すでに複数の口座へ、合計250万円ほどが送られていました。

「返金します」という連絡が、返金ではなく送金の操作をさせるために来る。本件の手口を一言でいえば、この一点に尽きます。

1回あたりの金額が抑えられていたこと

送金の記録を確認すると、いずれの回も50万円をわずかに下回る金額になっていました。

金融機関によっては、一定の金額を超える送金について確認や制限を設けている場合があります。本件で相手方がどのような意図でこの金額にしたのかは分かりませんが、結果として1回あたりの金額は抑えられ、回数を重ねる形になっていました。

原資はすべてご本人の預金です。借入をして支払われた形跡はありません。借入をしてお支払いになった場合は、返金の交渉と並行して返済が続きますが、本件ではその負担は生じていません。

最後の送金の翌日というご相談

ご相談をいただいたのは、最後の送金の翌日でした。被害に気づかれてから動かれるまでの時間が、きわめて短い事例です。

ご相談の前に、ご自身で警察へ相談され、振込先の口座の凍結まで済ませておられました。

詐欺の被害では、時間の経過とともに資金が移動していきます。早く動けたかどうかは、その後の選択肢の幅に直結します。

3. 「払った自覚がない」場合の被害額の確認方法

この類型では、ご自身がいくら支払ったのかを正確に把握されていない方が多くいらっしゃいます。受け取るつもりで操作していたため、当然のことです。

支払った総額は、返金を求めるあらゆる手続きの出発点になります。下記の3点を押さえてご確認ください。

必ず明細で合算すること

記憶や印象ではなく、明細で確認してください。確認すべきものは、銀行の振込明細、ATMの利用明細票、決済アプリの取引履歴です。

この類型では送金の回数が多くなりがちです。1回でも漏れていると、総額が変わってしまいます。

1回あたりの金額に惑わされないこと

1回あたりの金額が抑えられていると、「それほど大きな額ではなかった」という印象が残ります。

ご紹介した例でも、1回あたりは50万円をわずかに下回る額でした。しかし合算すると250万円ほどになります。印象で判断せず、必ず合計してご確認ください。

相手方が立て替えたとされる分を含めないこと

ご自身の資金が尽きたことを相手方に伝えると、「自分が一部を立て替えるので、残りは用意してほしい」と持ちかけられることがあります。相手方が送金したとされる明細の画像が示されることもあります。

このとき、「立て替えてもらった分も取り戻してあげたい」「借りたものは返さなければならない」とお考えになる方が多くいらっしゃいます。そのため、ご自身が送金した分と、相手方が送金したとされる分を合算して申告されることがあります。

しかし、相手方が実際に立て替えていることは、まずありません。送金したように見せかけた明細が作られているだけです。実際には存在しない送金を被害額に含めてしまうと、金額の裏づけが取れなくなります。

被害額として数えるのは、ご自身の口座から実際に出ていった分です。相手方が立て替えたとされる分は含めません。

一方で、ご家族などから借りたお金を、ご自身が送金された分は被害額に含めます。原資が誰のものかではなく、誰が送金したかで判断します。

なお、これらがすべて分かってからご相談いただく必要はありません。分かる範囲の情報からご状況を整理してご説明できますので、資料を揃えている間に時間が過ぎてしまうよりも、早めにご連絡いただくほうが選択肢が残ります。

4. 返金を案内する連絡を受けたときの確認方法

正規の窓口へ自分から連絡すること

返金や手続きを案内する連絡を受け取った際は、そのメールやメッセージのリンクからではなく、事業者の正規の窓口へご自身から連絡してご確認ください。

メールの文面だけで本物かどうかを見分けることは容易ではありません。注文した記憶がある商品についての連絡であれば、なおさらです。

操作を求められたら止めること

  • 「決済サービスで返金します」と言われた場合は、その時点で手を止めてください
  • 画面共有を求められた場合は応じないでください。口座や暗証番号を知られる可能性があります
  • 「送る」「送金」と表示された操作は、返金の受け取りではありません
  • 返金の確認のためとしてATMでの振込を求められた場合も、手続きを進めないでください
  • 返金先の口座番号や暗証番号を尋ねられた場合は、事業者の正規の窓口でご確認ください

また、一度被害に遭われた後、同じ相手から再び連絡があっても、追加の操作や支払いには応じないでください。「手続きに不備があった」「返金のために費用が必要」といった説明を受けた場合は、操作をされる前にご相談ください。

よくある質問

Q. 詐欺にあったお金は戻ってくるのでしょうか。

A. 結果をお約束することはできません。取りうる手段はいくつかありますが、どれを選べるかは、いくらを、いつ、どの方法で送金したかによって変わります。ご相談の際に、ご状況に応じてご説明します。

Q. お金を払ったつもりがありません。それでも被害として相談できますか。

A. ご相談いただけます。ご紹介した例のご相談者も、返金を受け取るための手続きだとお考えになっていました。実際に口座からお金が出ているかどうかは、明細で確認できます。

Q. 振り込んだのに、なぜ返ってこないのでしょうか。

A. 送金先が他人の名義で用意された口座であることが多く、資金が短時間で引き出されるためです。戻らないと決まっているわけではありませんが、振り込んだのだから戻るという前提では進みません。

Q. 詐欺サイトから返金してもらうことは可能ですか。

A. サイトの運営者に直接返金を求められることは、多くありません。所在や実体が確認できないためです。別の経路から検討することになりますので、ご相談の際にご説明します。

Q. 決済アプリで送金してしまいました。どうすればよいですか。

A. その決済サービスを提供している事業者へ、早めに申告してください。相手方のアカウントについて利用を停止する措置が取られることがあります。送金の履歴が確認できる画面を残したうえでご連絡ください。

Q. 通販サイトからのメールだと思っていました。本物との見分け方はありますか。

A. メールの文面だけで見分けることは容易ではありません。返金や手続きを案内する連絡を受け取った際は、そのメールのリンクからではなく、事業者の正規の窓口へご自身から連絡してご確認ください。

Q. 画面共有を求められました。応じてよいものですか。

A. 応じないでください。国民生活センターは、画面共有により口座や暗証番号などの情報を知られてしまう可能性があるとして、注意を呼びかけています。

Q. 警察に相談して口座を凍結してもらいました。次は何をすればよいですか。

A. 口座の凍結は、資金の流出を止める措置として有効です。凍結した時点の残高が分かっていると、見込みについて早くご説明できます。なお、金融機関への連絡は、弁護士が代理人として行うこともできます。警察に出向くことに抵抗がある、何から話せばよいか分からないという場合は、ご相談いただければ当事務所から金融機関へ連絡いたします。

Q. 1回あたりは50万円未満でした。少額なら相談しづらいでしょうか。

A. 総額でご判断ください。ご紹介した例も1回あたりは50万円をわずかに下回る額でしたが、合算すると250万円ほどになります。1回あたりの金額が小さいために総額を見誤ることは少なくありません。

Q. 送金先が複数の口座に分かれています。それでも請求できますか。

A. 口座数が多いことで手続きは増えますが、対応できないわけではありません。進め方は、ご相談の際にご説明します。

Q. 何を準備すればよいか分かりません。揃えてから相談すべきでしょうか。

A. 揃ってからでなくて構いません。分かる範囲の情報からご状況を整理してご説明できます。資料を揃えている間にも資金は動きますので、早めにご連絡ください。

Q. これは還付金詐欺と同じものですか。

A. 入口の名目は異なりますが、「お金が戻る」という説明で操作をさせ、結果として送金させるという点では共通する構造を持っています。医療費や保険料の還付を名目とするものも、通販の返金を名目とするものも、受け取るつもりが支払いになっているという点は同じです。

まとめ

返金詐欺は、事業者からの返金を装って、被害に遭われた方ご自身に送金の操作をさせる手口です。「決済サービスで返金します」として別の窓口へ誘導し、画面共有をしながら操作を案内するという流れが公的機関から示されています。

お金を払っている自覚がないまま進んでしまう点が、この類型の危ういところです。1回あたりの金額も抑えられるため、総額の大きさに気づきにくい構造になっています。

振り込んだお金が戻りにくいのは、送金先が他人の名義で用意された口座であることが多く、資金が短時間で引き出されるためです。

それでも、取りうる手段はあります。どれを選べるかはご状況によって変わりますので、ご相談の際に個別にご説明します。いずれにしても、早い段階で動けるかどうかが結果を左右します。

返金や還付を案内する連絡をきっかけに操作をしてしまった、お金が出ているのか自分でも分からない。そうしたご状況でしたら、ぜひ一度ご相談ください。

お手元の資料がそろっていなくても構いません。分かる範囲の情報から、当事務所でご状況を整理してご説明します。ご相談いただいたからといって、ご依頼をお願いすることはありません。揃えている間にも資金は動きますので、まずはご連絡ください。