「アンケートに答えると報酬がもらえる」という案内から始まり、言われたとおりに送金を繰り返すうちに金額が膨らんでいた。やめようとしたら「契約違反だ」「訴える」「違約金を払え」と言われている。当事務所には、こうしたご相談が寄せられています。

結論から申し上げると、こうした要求に応じる義務があるとは考えられません。また、相手方が実際に訴訟を起こすことは、自らの身元を明らかにすることになるため、通常は考えにくいところです。

この記事では、タスク詐欺の手口、「訴える」と言われた場合の考え方、返金を求めるために検討できる方法を整理します。あわせて、当事務所が実際にお受けしたご相談の例もご紹介します。

※本記事に掲載するご相談事例は、ご本人および相手方が特定されないよう、時期・金額を抽象化し、内容を再構成しています。

1. タスク詐欺とは|少額の報酬から始まり送金額が膨らむ手口

タスク詐欺は、「作業をこなせば報酬が得られる」という案内で人を集め、その作業の一部として送金をさせる手口です。送金した額に上乗せして返金されると説明されるため、続けるほど手元が増える計算になります。

実際には、途中まで報酬が支払われることがあります。そのため、被害に遭われた方が「これは詐欺だ」と気づくのは、金額が大きくなってからになります。

段階内容
1入口SNSの通知やメッセージアプリから、アンケートやポイント獲得の案内が届く
2少額の報酬簡単な作業に対して、数百円程度の報酬が実際に支払われる
3タスクの開始グループに招かれ、指示役のもとで「タスク」と呼ばれる作業が始まる
4送金を含む作業画面のスクリーンショットを撮り、表示された金額を送金するよう指示される
5金額の拡大送金額が段階的に大きくなる。上乗せして返金されるという説明が続く
6すり替えと追加要求「金額が不足している」「整合性が取れない」として、さらに送金を求められる

少額の報酬を先に渡して信用を作る段階

この手口でもっとも効いているのは、最初の報酬が実際に支払われるという点です。

金額としてはわずかですが、「言われたとおりにやれば本当にお金が入る」という体験が先にあることで、その後の案内を疑う理由が減ります。実際に入金があるため、確かめようもありません。

少額でも入金があったことは、安全である証拠にはなりません。むしろ、金額が大きくなる前段として置かれていることがあるとお考えください。

スクリーンショットと送金を繰り返す「タスク」

作業の内容として多いのが、指定されたページを開いてスクリーンショットを撮り、そこに表示された金額を送金するというものです。

作業自体は単純で、時間もかかりません。そのため「作業をしている」という感覚が強く残り、「送金をしている」という感覚が薄くなります。

また、災害復興支援や社会貢献といった名目が添えられることがあります。送金の目的に納得感を与えるための説明です。

グループで進める流れ作業

タスクは、複数の参加者と指示役で構成されたグループで進められます。

ほかにも参加者がいて、同じように作業を進めている。その状況が、手を止めにくくさせます。なお、その参加者が本当に別の被害者であるのか、相手方が用意した人物であるのかは、参加している側には分かりません。

ポイント獲得やアンケートを入口にする型

入口として使われるのは、多くの場合、ポイントの獲得やアンケートへの回答といった、ごく日常的な案内です。

SNSで企業のキャンペーンを装うアカウントから通知が届き、そこからメッセージアプリへ誘導されるという流れが目立ちます。実在する事業者のキャンペーンを装っている場合もありますので、その事業者の公式サイトで告知の有無をご確認ください。

2. ご相談事例|「実は3倍の額のミッションだった」

ここからは、当事務所が実際にお受けしたご相談を、手口の流れを理解していただくための例としてご紹介します。

ご相談者 30代・女性

手口 SNSのキャンペーンを装うアカウントからメッセージアプリへ誘導し、タスクを実行させる

被害額 銀行振込で150万円ほど。ほかに決済アプリによる送金分あり

経過 被害発生から数日でご相談。被害当日に警察へ相談し、口座凍結も実施現在 相手方から、さらに同額の送金を求められている状態

入口は「アンケートで300円」

ご相談者のもとに、SNS上でメンションによる通知が届きました。送り主は、小売事業者のキャンペーンを装うアカウントです。そのアカウントの投稿を経由して、メッセージアプリへ誘導されています。

最初に案内されたのは「アンケートに答えると300円もらえます」というものでした。

この300円は、実際に支払われています。金額としてはわずかですが、言われたとおりにやればお金が入るという体験が先にあることで、その後の案内も受け入れやすくなります。

復興支援を名目としたタスク

信用ができたところで案内されたのが、本題のタスクです。

災害復興支援を名目として、通販サイトのページを開いてスクリーンショットを撮り、そこに表示された金額を送金する。そうすれば上乗せした金額が返金される。このような説明でした。

タスクは、参加者数名と指示役で構成されたグループで進められています。相手方はこれを「タスク」と呼び、流れ作業のように次々とこなしていく形が取られていました。

金額のすり替えと追加の要求

金額は段階的に大きくなっていきました。そして最後のタスクで、ご相談者は数十万円を振り込まれます。

ところが振込の後、相手方から告げられたのは「実はこれはその3倍の額の送金というミッションだった」という説明でした。ご相談者は、時間を置いてから差額を送金されています。銀行振込の合計は150万円ほどになりました。

ところが今度は、「最初に振り込んだ分との整合性がつかない」と言われます。整合性を取るために、もう一度同額を振り込むようにという指示でした。

この要求は現在も続いています。「タスクの金額が不足している」「送金額の整合性が取れない」といった理由で、さらに同額の送金を求められている状態です。

金額の基準を相手方が握っている以上、「整合性が取れた」と言われる日は来ません。応じるたびに、次の理由が用意されます。

ご申告と、明細で確認できた額の差

ご相談をいただいた時点で、ご本人が把握されていた金額と、銀行の振込明細から確認できた額には差がありました。差額は、決済アプリを使った送金分です。

この類型では送金の回数が多く、手段も複数にわたるため、ご自身で総額を把握しきれなくなることが少なくありません。

3. 「訴える」「違約金を払え」と言われた場合

タスクの途中で手を止めようとすると、相手方の態度が変わることがあります。

  • 「契約違反だから違約金が発生する」と言われる
  • 「訴訟を起こす」「法的措置をとる」と告げられる
  • 「タスクを完了しなければ、これまでの報酬も返してもらう」と言われる
  • 「あと一回で完了するのに、途中でやめると損をする」と説得される
  • 氏名や勤務先を把握していると示され、周囲に知らせると言われる

こうした言葉を受けて、応じるしかないとお考えになる方が多くいらっしゃいます。検索でも「タスク詐欺 訴えられた」という言葉が多く尋ねられています。

なぜ加害者側が「訴える」と言うのか

整理すると、構図は単純です。送金を続けさせるために、もっとも効く言葉が選ばれているだけです。

被害に遭われた方は、自分が騙されたのかどうか判断がつかない状態にあります。そこに「契約」「違約金」「法的措置」という言葉が入ると、自分に落ち度があるのではないかと考えてしまいます。その迷いが、追加の送金につながります。

要求に応じる義務があるとは考えられない理由

法律の建前から申し上げます。詐欺による意思表示は取り消すことができるとされています(民法第96条第1項)。また、公の秩序または善良の風俗に反する法律行為は無効とされています(民法第90条)。

送金をさせること自体を目的とした「タスクの契約」について、違約金の支払い義務が生じると考えることは困難です。そのような内容の取り決めが、法的に有効なものとして扱われるとは考えにくいところです。

もっとも、個別のご事案でどう扱われるかは、やり取りの内容や経緯によって変わります。断定的な判断はお示しできませんので、そのような要求を受けておられる場合は、お支払いになる前にご相談ください。

実際に訴訟が起こされることが考えにくい理由

訴訟を提起するには、原告として自らの氏名と住所を裁判所に明らかにする必要があります。

詐欺を行っている側が、それを選ぶことは通常考えにくいところです。「訴える」という言葉は、実際に訴える意図があって発せられているわけではなく、送金をさせるための材料として使われているのが実情です。

なお、仮に何らかの書面が届いた場合でも、ご自身で対応される前にお持ちください。裁判所から届いたものなのか、そう見えるように作られたものなのかを含めて確認します。

周囲に知らせると言われた場合

氏名や勤務先を把握していると示され、「家族や職場に知らせる」と言われることがあります。

この点をご心配されて、ご相談をためらわれる方がいらっしゃいます。もっとも、こうした言動そのものが問題になり得るものです。一人で抱えられるよりも、早い段階でご相談いただくほうが、とりうる対応が広がります。

4. タスク詐欺の返金を求めるために検討できる方法

取りうる手段は、送金に使った経路によって大きく変わります。ここが、この類型でもっとも押さえておいていただきたい点です。

送金の手段検討できること
銀行振込・ATMからの振込振込先の口座の凍結と分配、口座の名義人に対する返金請求
決済アプリによる送金決済サービスの提供事業者への申告。相手方アカウントの利用停止など
電子マネー・ギフトカード・暗号資産返金は難しく、被害回復の手段をご提案できないことが多くなります

銀行振込で送金した場合

振込先の口座について、金融機関による凍結の措置が取られることがあります。その口座に残高が残っていれば、振り込め詐欺被害者救済法にもとづいて分配される手続きが進むことがあります。

ただし、戻るのは凍結の時点で残っていた分に限られます。すでに引き出されていれば、この方法では戻りません。

残高がなかった場合も、振込の明細に記録された名義人に対して返金を求めていく方法があります。

弁護士には、依頼を受けた事件について、所属する弁護士会を通じて公務所や公私の団体に必要な事項の報告を求めることができる制度があります(弁護士法第23条の2)。口座の名義人に関する情報を確認する手段の一つです。

電子マネーやギフトカードで送った場合

率直に申し上げます。電子マネー、ギフトカード、暗号資産による送金は、返金が難しく、被害回復の手段をご提案できないことが多くなります。

これらの手段には、銀行振込のような名義の記録が残らず、口座の凍結にあたる仕組みもないためです。使用された時点で、追跡の手がかりが失われます。

当事務所では、対象にできる部分とできない部分を最初に切り分けてお伝えしています。できないことを、できるかのようにお伝えすることはいたしません。

なお、銀行振込の分がある場合は、その部分について対応できることがあります。手段が複数にまたがっている場合は、全体の状況をお聞かせください。

支払った総額の確認方法

この類型では送金の回数が多く、手段も複数にわたります。そのため、ご自身で総額を把握しきれなくなることが少なくありません。

  • 銀行の振込明細、ATMの利用明細票を、送金した回数分すべて確認する
  • 決済アプリの取引履歴、電子マネーの購入記録も確認する
  • 途中で受け取った報酬の額を差し引く必要はない
  • ご家族などが立て替えて送金した分は、ご本人の送金額とは分けて考える

すべて分かってからご相談いただく必要はありません。分かる範囲の情報からご状況を整理してご説明できます。

5. 警察への相談と口座凍結

被害届の提出と口座の凍結

口座の凍結は、被害に遭われた方がご自身で行うものではありません。警察への相談や、振込先の金融機関への連絡をきっかけに、金融機関が判断して行います。

被害に気づかれた場合は、警察と振込先の金融機関の両方へご連絡いただくことが出発点になります。この手続きは、資金の流出を止めるという意味でも早いほど有効です。

なお、金融機関への連絡は、弁護士が代理人として行うこともできます。警察に出向くことに抵抗がある、何から話せばよいか分からないという場合は、ご相談いただければ当事務所から金融機関へ連絡いたします。

警察で「民事の問題」と言われる場合

警察に相談したところ、民事の問題だと言われた、被害届を受理してもらえなかった、というお話も伺います。

刑事の手続きと、支払ったお金を取り戻す民事の手続きは別のものです。警察が刑事事件として扱うかどうかの判断と、民事で返金を求められるかどうかは、直接には結びつきません。

分配までに時間がかかること

口座が凍結され、分配の手続きに進んだ場合でも、被害に遭われた方のもとへ届くまでには相応の時間がかかります。公告や申請の期間が法律で定められているためです。

刻一刻と進捗があるわけではありません。この点は、ご依頼をいただく前に必ずお伝えしています。

6. 被害の途中で気づかれた方へ

いま止めることがもっとも大きい対応

まだ送金を続けている段階でこの記事をご覧になっている場合、いま止めることが、もっとも大きい対応になります。

「あと一回で完了する」という説明が実現することはありません。「整合性が取れた」と言われる日も来ません。金額の基準を相手方が握っているためです。

手元で確認できること

ご相談の前に、ご自身で確認していただけることがあります。

  • 誘導されたサイトのURL(ドメインの登録日は公開情報として確認できます)
  • その事業者の公式サイトに、同様の被害についての告知がないか
  • SNSで最初に届いた通知や投稿のスクリーンショット
  • グループのやり取り(タスクの指示、金額の説明、追加要求の文面)
  • 最初に少額の報酬を受け取った際の記録
  • 銀行の振込明細、決済アプリや電子マネーの履歴

ドメインの登録日は、サイト名やURLが分かれば誰でも調べられる情報です。見た目が整っていても、作られたのが数日前であれば、それは判断の材料になります。

ただし、これは材料の一つにすぎません。登録から年数が経っているサイトが安全であるとは限りませんので、ほかの事情とあわせてご覧ください。

やり取りを削除しないこと

グループから退出される際、やり取りを消してしまわれる方がいらっしゃいます。腹立たしさや気まずさから、そうされるのは自然なことです。

もっとも、いったん削除されたやり取りは後から復元できないことが多くあります。グループを抜ける前、アカウントをブロックする前に、一度ご相談ください。

よくある質問

Q. タスク詐欺とはどのようなものですか。

A. 「作業をこなせば報酬が得られる」という案内で人を集め、その作業の一部として送金をさせる手口です。送金した額に上乗せして返金されると説明されるため、続けるほど手元が増える計算になります。途中まで報酬が支払われることがあるため、気づくのが遅れます。

Q. 「訴える」「違約金を払え」と言われています。応じるべきでしょうか。

A. お支払いになる前にご相談ください。送金をさせること自体を目的とした取り決めについて、違約金の支払い義務が生じると考えることは困難です。また、訴訟を起こすには相手方が自らの氏名と住所を明らかにする必要があり、詐欺を行っている側がそれを選ぶことは通常考えにくいところです。

Q. 「整合性が取れないのでもう一度振り込んで」と言われています。

A. 金額の基準も整合性の基準も相手方が決めていますので、応じるたびに次の理由が用意されることになります。「整合性が取れた」と言われる日は来ません。ご紹介した例のご相談者も、現在なお同額の送金を求められています。

Q. 最初に300円が本当にもらえました。それでも詐欺なのでしょうか。

A. 少額の入金が実際にあったことは、安全である証拠にはなりません。「言われたとおりにやればお金が入る」という体験を先に作り、その後の案内を受け入れやすくする運び方があります。

Q. タスク詐欺の返金は可能ですか。

A. 送金に使った経路によって変わります。銀行振込であれば、振込先の口座の凍結と分配、口座の名義人に対する返金請求を検討できます。決済アプリの場合は、その事業者への申告が考えられます。

Q. 電子マネーやギフトカードで送ってしまいました。これも取り戻せますか。

A. 率直に申し上げると、これらの手段による送金は返金が難しく、被害回復の手段をご提案できないことが多くなります。銀行振込の分がある場合は、その部分について対応できることがありますので、全体の状況をお聞かせください。

Q. 警察に相談したら民事の問題だと言われました。

A. 刑事の手続きと、支払ったお金を取り戻す民事の手続きは別のものです。警察が刑事事件として扱うかどうかの判断と、民事で返金を求められるかどうかは直接には結びつきません。

Q. 口座を凍結してもらいました。いつ頃お金が戻りますか。

A. 公告や申請の期間が法律で定められているため、相応の時間がかかります。また、口座に資金が残っていなければ分配される原資そのものがありません。

Q. グループには他の参加者もいました。あの人たちも被害者でしょうか。

A. 参加している側には分かりません。同じ被害に遭われている方である場合もあれば、相手方が用意した人物である場合もあります。他の人も進めているという状況が、手を止めにくくさせる働きをします。

Q. サイトが本物かどうか、自分で確かめる方法はありますか。

A. ドメインの登録日は公開情報として確認できます。作られたばかりのサイトが高額の送金を求めている場合は注意が必要です。ただし、これは材料の一つで、これだけで断定できるものではありません。

Q. 家族や職場に知らせると言われています。

A. こうした言動そのものが問題になり得るものです。ご心配から相談をためらわれる方がいらっしゃいますが、一人で抱えられるよりも、早い段階でご相談いただくほうがとりうる対応が広がります。

Q. 支払った金額が自分でも分かりません。相談できますか。

A. そのままでご相談いただけます。この類型では送金の回数が多く、手段も複数にわたるため、総額を把握しきれなくなることは少なくありません。明細をお持ちいただければ、そこから整理します。

Q. まだ送金を続けている段階です。今相談してよいのでしょうか。

A. その段階でこそご相談ください。いま止めることが、もっとも大きい対応になります。追加のお振込みをされる前にご連絡ください。

まとめ

タスク詐欺は、「作業をこなせば報酬が得られる」という案内から始まり、その作業の一部として送金をさせる手口です。最初に少額の報酬が実際に支払われるため、その後の案内を疑いにくくなります。

金額が大きくなったところで、「金額が不足している」「整合性が取れない」という説明が入ります。金額の基準を相手方が握っているため、応じるたびに次の理由が用意されます。

やめようとすると、「契約違反だ」「違約金を払え」「訴える」と言われることがあります。しかし、送金をさせること自体を目的とした取り決めについて、違約金の支払い義務が生じると考えることは困難です。また、訴訟を起こすには相手方が自らの身元を明らかにする必要があり、詐欺を行っている側がそれを選ぶことは通常考えにくいところです。

返金について取りうる手段は、送金に使った経路によって変わります。銀行振込であれば口座の凍結と分配、名義人への請求を検討できます。一方で、電子マネーやギフトカードによる送金は返金が難しく、手段をご提案できないことが多くなります。

「訴える」と言われている、あと一回で完了すると言われて送金を続けている、自分がいくら払ったのかも分からなくなっている。そうしたご状況でしたら、追加のお振込みをされる前に、ぜひ一度ご相談ください。

お手元の資料がそろっていなくても構いません。分かる範囲の情報から、当事務所でご状況を整理してご説明します。対象にできない部分がある場合は、その旨も最初にお伝えします。ご相談いただいたからといって、ご依頼をお願いすることはありません。